第3作 | ズッコケマル秘大作戦 |
基礎データ
初版 | 1980年3月 |
ページ数 | 182(あとがき2含む) |
ジャンル | 恋愛 |
挿絵 | 前川かずお |
あらすじ | ハチベエたちのクラスにやってきたのは彼らがかつてゲレンデで出会った美少女だった。美しく聡明でお金持ちの真智子は たちまち人気者になる。モーちゃんは彼女に恋をして、ハチベエたちに相談する。ところが、真智子に関する悪いうわさが飛び交いだす。 ハチベエたちは真智子から秘密を打ち明けられ、助けて欲しいと懇願されるが……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | 雪の妖精 | 8 |
2 | 新しいクラスメイト | 26 |
3 | 恋愛作戦 | 69 |
4 | うそかまことか | 119 |
5 | そして、ふたたび…… | 163 |
作者からきみたちへのメッセージ
好きで好きでたまらないあの子に、ものもいえずにいるきみよ。「好きです、愛してます」と、いったのに、ぜーんぜんふりむいてくれないあの子。 そんなみじめなおもいのきみよ。さあ、この物語を読もう。世の中には、きみよりもっとかわいそうな子がいるのだよ。 |
作品鑑賞
・第三作目にしてシリーズ最高傑作と呼んでも差し支えのない作品が誕生してしまった。 ジャンルは一応恋愛ものだが、あとがきの作者の言葉にあるように、実際はヒロイン真智子の児童文学にはもったいないほど陰影のある、リアルな人間像の描写に力が注がれている。また、三人組がそれぞれ異なるアプローチで真智子を知っていく構成も素晴らしい。 前半の、高学年と低学年の生徒のペア活動も、極めてリアルな筆致で活写されている。モーちゃんのことを「ブタ」と呼ぶクソガキすら、最後は愛着のあるキャラに仕立ててしまう作者の筆力には脱帽する。 また、学校を舞台にした初めての長編なので、荒井陽子、榎本由美子、安藤圭子に加え、新庄則夫、高橋ひとみ、上野ミサエなどの6年1組のクラスメイトが新たに登場する。 |
・傑作であるが、自分は正直、最初に読んだときの印象は良くなかった。 個人差はあるだろうが、小学生が読んでもそれほど感銘は受けないのではないだろうか。 人を恋することを知ったあとで読むと、真智子との別れが、胸が締め付けられるような痛みを伴って迫ってくる。このなんとも名状しがたい読後感は、シリーズの中でも特異で、匹敵するのはやや種類は違うが「ズッコケ山賊修行中」くらいしかない。 |
・エイジ40シリーズでは、なんと、この作品の後日談が描かれているが、やはり子供時代の思い出を作者自ら汚すようで、反発を覚えた。一応読んだけど、書く必要があったかどうか、極めて疑問だ。 |
・優等生の新庄則夫の、家庭のやや暗い側面も描かれているが、これ以降、同様の描写は見られない。その新庄が、真智子が飲み屋街で花売りのアルバイトをしていると言うのは、時代を感じさせる。 |
管理人の評価
・児童文学の範疇から外して、一般小説としても通用するほどに優れたドラマ。文章、挿絵、すべてにおいて言うことなし。 | ランクS |