第5作 | ズッコケ心霊学入門 |
基礎データ
初版 | 1981年10月 |
ページ数 | 174(あとがき2含む) |
ジャンル | ホラー |
挿絵 | 前川かずお |
あらすじ | 心霊写真を撮影して雑誌に載せてもらおうと意気込むハチベエ。しかしハカセもモーちゃんも乗り気でなく、4年生の浩介を誘って町内の心霊スポットを巡るハチベエ。最後に訪れた洋館で撮った写真が、見事採用され、しかも雑誌の特集記事にするために心霊研究家などが花山町にやってくると言う騒ぎになる。調査に同行した三人組は洋館で怪異な現象を体験するのだったが……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | 心霊写真のうつしかた | 8 |
2 | 幽霊屋敷のさぐりかた | 41 |
3 | 交霊実験のやりかた | 69 |
4 | 悪霊とのつきあいかた | 106 |
5 | ポルターガイスト撃退のしかたズ | 140 |
作者からきみたちへのメッセージ
この本は、夜、うす暗いところでは読んではいけない。なぜなら、あまりの恐怖に気絶するから。 この本を読むには、紙おむつか便器を用意しなければならない。なぜなら、今夜、あなたはトイレにいけなくなるから。 この本は、ひとり一冊ずつ本屋さんで買って読まなくてはいけない。なぜなら、本が売れないと作者が貧乏になるから。 |
作品鑑賞
・作者はミステリーと並んでこのホラーと言うか、怪談物に弱いらしく、ミステリーほどではないが、それに準ずるほどの作品数を数える。 もっとも、この作品は、単純なお化けの話にせず、途中からポルターガイスト、超能力、心理学などへテーマを変転させている。そのせいもあって、ホラージャンルの作品では怖さと言う点ではいささか物足りない。しかし、終盤になって、事件が意外な方向へ飛び火し、ハカセが持ち前の知識欲と推理力をフル回転させて、専門家の大人たちが舌を巻くような卓抜な推論を展開するあたりは、むしろミステリーとしての面白さが堪能できる。 |
・一方で、同じ学校に通う小学生としては珍しく一話限りのゲストキャラ・恒川浩介の存在が心に残る。祖父をなくして田舎から都会へ出てきて間もない、色白で寂しそうな少年。それがハチベエになついたり、要所要所で趣味の俳句を吟じたり、他の作品ではあまり見られないキャラクターである。 残念ながら、彼はこれ一作きりでシリーズには再登場しないのだが、むしろ、だからこそ特異な存在として読者の胸に残るのかもしれない。 |
・町内を舞台にしているが、6年1組のクラスメイトたちの存在は希薄だ。そのかわり、ハカセの妹・道子が第1作以来、台詞つきで登場している。 |
・冒頭の雨上がりの下校のシーン、最後のプールのシーンなど、簡潔な文章で学校生活を瑞々しく描いているあたり、さすがである。 |
・余談だが、この作品は管理人が初めて読んだシリーズ作品で、そのせいか、常に他の作品とは特別な存在であった。 |
管理人の評価
・先の展開が読めないストーリーや、短くも密度の濃い文章、魅力的なゲストキャラなど、美点の多い秀作。ただし、怖さと言う点ではいまひとつ。 | ランクA |