第7作 | とびだせズッコケ事件記者 |
基礎データ
初版 | 1983年3月 |
ページ数 | 198(あとがき2含む) |
ジャンル | 学校行事、ドラマ |
挿絵 | 前川かずお |
あらすじ | 6年1組では班ごとに学級新聞を発行することになった。紆余曲折あったが、ハチベエたち三人は前線で記事を取る新聞記者になる。彼らはそれぞれ、町内や学校内のうわさや事件を追及していくのだが……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | 事件記者登場 | 8 |
2 | にせ札事件 | 53 |
3 | 特ダネ競走 | 101 |
4 | 女心と記者魂 | 151 |
作者からきみたちへのメッセージ
この物語を、全国の少年新聞記者諸君にささげる。 この物語は、真実の報道のため、命をかけて日夜活動をつづける男たちの、ある勇気の記録なのだ。 |
作品鑑賞
・扱われている出来事の規模は小さいが、それぞれ身近で起こりうるリアルな内容で、小学6年生の活動範囲内で終始しているという意味では、初めてのジャンルと言える。 ただし、のちに作品化される運動会や修学旅行、文化祭などの学校行事と言い切ってしまうのも躊躇を覚える。確かにきっかけは学級新聞と言うある種の行事だが、本編のハチベエたちの活動は極めて能動的、自主的で、学級行事の枠を勝手に飛び出しているからだ。 |
・また、中核をなすエピソードも存在せず(強いて挙げればめぐみ先生の恋愛か)、三人組が中盤から本腰を入れて追う三つの事件(?)が同時並行的に進むのも、体裁は長編でありながら、実質はオムニバス形式に近いというのも、他の作品では見られない特色だ。 |
・中盤の入り口で、それぞれの取材対象の糸口を提供する探偵ばあさんを登場させ、全ての取材が済んでから、再び探偵ばあさんの劇的なエピソードにつなぐ構成も見事だ。 |
・この時期の作品としては当然だが、文章も引き締まり、ほどよいユーモアをはらみつつ、緩急自在の筆致は前作よりさらに円熟していると言える。ついでながら、前川かずおの挿絵も、安定してきて、この辺りの絵柄が、シリーズの標準的なスタイルと言っていいほどだ。具体的には、ハチベエの顔の輪郭に明確な段差が生じる、などだ。 |
・冒頭、本編とはほとんど関係の無い立て看板を巡る、校長と宅和先生の会話なども、この作品に独特の余裕と言うか、滋味を生み出すのに役立っている。スペースとしてはごく僅かだが、三人組が探偵ばあさんの家庭環境から孤独を嗅ぎ取る箇所なども、作品に奥行きを与えている。実際、少なくともこの作品が執筆された頃は、まだフィクションとして地域コミニュティの有用性、実在性が説得力を持っていたのだろう。 |
・6年1組が舞台と言うことで、クラスメイトの出番も多い。特にハチベエと宿敵・安藤圭子のやりとりは楽しい。 |
管理人の評価
・扱っている内容は全般に軽いものなので、読後感はそれほど深くないが、小学校自体のノスタルジックな雰囲気を味わうには最適の佳作だ。 | ランクA |