第8作 | こちらズッコケ探偵事務所 |
基礎データ
初版 | 1983年11月 |
ページ数 | 182(あとがき2含む) |
ジャンル | ミステリー |
挿絵 | 前川かずお |
あらすじ | 盲腸で入院しているハカセの所へハチベエとモーちゃんが見舞いに行く。しかしその途上、モーちゃん持参のお見舞いの品が、別の品物と入れ替わっていた。その後、モーちゃんの自宅があらされ、さらにはモーちゃん自身が誘拐されてしまう……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | 事件のはじまり | 8 |
2 | モーちゃんの災難 | 47 |
3 | 捜査開始 | 83 |
4 | 人形専門店・夢の館 | 134 |
作者からきみたちへのメッセージ
この物語を、全国の探偵小説ファンに贈ろう。探偵小説こそ、ミステリーの中のミステリー。推理小説の華。 名探偵の登場しない推理小説なんて、ゴムのぬけたパンツにひとしい。 |
作品鑑賞
・2作目に続いてのミステリー。作者のミステリー好きがよく分かる。前書きでわざわざ名探偵うんぬんと言っているのは、当時隆盛だった社会派ミステリーを意識しての表現だろう。もっとも、70年代の横溝ブームを経て、既に古典的な探偵小説の再評価始まっていたと思うが。 |
・ミステリーとは言っても、今回は殺人ではなく、誘拐、偽造宝石と、いわゆる本格ミステリーとは異なるプロット。日常の何気ない出来事から、徐々に奇怪な出来事が三人組にふりかかる、この卓抜した筆致は作者ならでは。 |
・三人組の謎に迫る手段も、偶然モーちゃんが監禁中に聞いた言葉を、昔の担任教師とからめており、いかにも身近で起きた犯罪らしいリアリティに満ちている。 |
・モーちゃんが誘拐されている間のスリル、謎解きの楽しさ、大胆な方法で敵地に乗り込むときの緊迫感、そして土壇場で犯人たちの足をすくうカタルシス、など、娯楽児童文学としてクオリティが高い。ミステリーとしての伏線もしっかり張られている。一方で、リリシズムやドラマとしての深みは希薄になっているのは仕方のないところか。 |
・花山町周辺を舞台にしていながら、クラスメイトがほとんど登場しない。また、モーちゃんのマンガ好きが初めて描写されている。 |
・エピローグで、「明日が運動会」と言う台詞が出て来る。実際に運動会が物語化されるのははるか先だ。 |
管理人の評価
・ドラマとしては弱いが、ミステリーとしては完成度は高い。文章の切れも良い。 | ランクB |