第13作 | うわさのズッコケ株式会社 |
基礎データ
初版 | 1986年7月 |
ページ数 | 206(あとがき2含む) |
ジャンル | シミュレーション |
挿絵 | 前川かずお |
あらすじ | 堤防の釣り場で弁当やジュースを売ること思いついたハチベエたち。目論見は成功し、更なる事業拡大のため、彼らは株式会社を設立し、クラスメイトに参加を求める。事業は拡大し、このまま順調に行くかと思われたが……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | イワシ大漁 | 10 |
2 | HOYHOY商事株式会社 | 58 |
3 | 会社倒産? | 100 |
4 | ラーメンほいほい亭 | 151 |
作者からきみたちへのメッセージ
この本は、小学生にでもできる株式会社のつくりかた、資金のあつめかた、上手な経営のしかた、ガッポガッポともうけるやりかたなどを、 わかりやすく、そしておもしろく書いたものである。 この一さつがあれば、きみも社長になれる! |
作品鑑賞
・シリーズ中でももっとたくさん売れた作品じゃないかと勝手に思っている。それくらい、面白い。ドラマ性や、テーマの深さなどを抜きにして、純粋な面白さと言う点では、これほど優れた作品はないだろう。しかも内容は、ハチベエたちが株式会社を立ち上げるという、当時としては極めて画期的、先鋭的なシミュレーション小説なのだから驚きだ。 また、読むだけで株式会社のおおまかな仕組みが分かるのもお得だ。 |
・後にいくつも類似作品が出る、シミュレーションジャンルだが、この作品ほど成功しなかったのは、何故だろう。シミュレーションといっても、ハチベエたち三人組が、勝手に巻き込まれるのではなく、あくまで能動的に商売を始めて事業を拡大して行く様子を描いているのが、ついつい引き込まれてしまう要因だろう。また、放浪の画家の淡海との交流、中盤の経営危機、後半のラーメン屋でのクラスメイトたちとの協力の様子が、物語にスパイスとアクセントを添えて、一瞬たりともストーリーがだれないところも素晴らしい。 |
・放浪の画家、淡海のエピソードは、恐らく実在の人物のエピソードをモチーフにしているのではないかと思うのだが、自分は恥ずかしながら知らない。無論、作者の完全な創作かも知れないが。 |
・株式総会での、ハカセがある種の詭弁を弄して切り抜けてしまう辺りの頼もしさ、淡海のところへおしかけて売掛金を回収しようとするハチベエの行動力など、各キャラの個性もいよいよ強く発揮されているし、いつになくクラスメイトたちの出番が多いのも見所だ。田代信彦が漫画家志望、中森晋助がラーメン屋の息子など、脇役たちの描写もいつになく詳細で具体的だ。 |
・最後に事業の総決算を途中で打ち切っているのも心憎い。あとがきで作者は読者に計算して見て欲しいと書いているが、恥ずかしながら、一度も計算したことはない。面倒だから。 無論、波止場で勝手に食品売ったり、インスタントラーメンを出店で売ったらまずいだろとか、突っ込みどころもあるが、とにかく無類に面白い。 |
管理人の評価
・勝手な憶測だが、この作品がシリーズの人気を不動のものにしたんじゃないかと思う。逆に言えば、内容的にこれを上回る作品は、以後、書かれていない気もする。 | ランクS |