第14作 | ズッコケ恐怖体験 |
基礎データ
初版 | 1986年12月 |
ページ数 | 198(あとがき2含む) |
ジャンル | ホラー |
挿絵 | 前川かずお |
あらすじ | ハカセの田舎のさびれた港町に遊びに来た三人組。楽しく魚釣りをしたり泳いだりして夏をエンジョイしていたが、肝試しの夜、 ハチベエが誤って土地の人々が禁忌する場所へ迷い込み、幽霊を目撃したことから、三人は追い出されるようにして花山町へ帰る。しかし、その後もハチベエの周囲で怪異な出来事が起こる。港町の小学校教諭は、幽霊の正体を暴くと、発表会を開くのだが……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | のろわれた町 | 10 |
2 | 肝だめし騒動 | 64 |
3 | ハチベエ、幽霊にとりつかれる | 117 |
4 | 地下室の謎 | 152 |
作者からきみたちへのメッセージ
この物語は、それほどこわくありません。ほんとうです。ちっともこわくないから、安心して読んでください。 くりかえしますが、この物語は、あんまりこわくありません。だから、どんどん読んでください。 ほらね、すこしもこわくないでしょう。ね、こわくない。こわくない。こわくない! |
作品鑑賞
・「ズッコケ心霊学入門」に続く、純ホラー作品。ただし、「心霊学」が洋館を舞台に、交霊実験、ポルターガイストなど、バタ臭いテイストだったのだが、今回はがらりと趣を変えて、寂れた漁村に、肝試し、着物姿の女性の幽霊、歴史の闇に埋もれた秘話など、純和風テイストで統一されている。 ドラマ的な面白さでは「心霊学」が上だろうが、ひたすら怖いという点では、こちらが遥かに上である。 |
・「財宝調査隊」ではモーちゃんの田舎が導入部だったが、今作はハカセの田舎が舞台になっている。寂れた漁村の様子や、土地の子供たちとの素朴な交流など、一見平穏だが、頭のおかしい老婆との出会いが、その中に一筋恐怖を垂らしている演出が見事。肝試し大会のクライマックスで、ハチベエが幽霊を見た後は、怒涛の展開で、最後の謎解きまで恐怖描写の連続である。 |
・作者の好みが全開で、ホラーに限らず、歴史、それも当時(今も)筆者が住んでいた山口県防府市周辺を舞台にした、幕末時代の史実をまじえて、「おたか」と言う幽霊を設定しているのが特徴的だ。タブーとされていた幽霊の実態を明らかにしていく地元教師の講演で、一応合理的な説明をつけた後で、今度は紛れもない超常現象をぶつけて読者の肝を冷やす、筆者のストーリーテラーとしての才能に脱帽、である。、 |
・それでいて、怖いばかりでなく、「おたか」との別れを寂しく思うラストのハチベエの描写も添えている。 |
・ハカセの田舎が舞台なので、6年1組のクラスメイトはほとんど登場しない一方で、地元の子供たち、ハカセの家族や親戚の描写は豊富だ。特に、秀才で美人の典子の存在が光って、以後の活躍も期待してしまった。 |
・なお、ハチベエたちが怪しい老婆と出会うシーンは、個人的にはついつい横溝正史の「真珠郎」の冒頭部を思い出してしまうが、単なる偶然だろうか。 |
管理人の評価
・和風ホラーとしては、最高の作品だろう。ただし、ドラマとしてはやや弱い。 | ランクB |