第15作 | ズッコケ結婚相談所 |
基礎データ
初版 | 1987年7月 |
ページ数 | 204(あとがき2含む) |
ジャンル | ドラマ |
挿絵 | 前川かずお |
あらすじ | ハチベエは同年代の少女の飛び降り自殺の記事を見たことから、ハカセたちと一緒に人生相談所を開設して、人々の悩みを解決しようとする。しかし小学生のハチベエたちに人生相談などうまくいくはずもなく、すぐにやめてしまうのだが、モーちゃんがそれにかこつけて自らのプライベートな悩み事を打ち明ける。モーちゃんが幼い頃に離婚した母親に、再婚話が持ち上がっているらしいのだが……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | 子ども電話相談室 | 10 |
2 | モーちゃんの悩み | 60 |
3 | まぶたの父、まぼろしの兄 | 109 |
4 | 東京の空の下 | 148 |
作者からきみたちへのメッセージ
人生、いろいろ悩みがあるもんだ。勉強の悩み、おこづかいの悩み、友だちや先生の悩み、……そして結婚の悩み。 いずれは、きみも、この問題にぶつかるときがくるだろう。 その日のために、この物語を読もう。そうすれば、きみは、すてきな奥さんや、旦那さまをつかまえられるぞ。 |
作品鑑賞
・作者からの温かいメッセージには上記のように書いてあるが、読後ウン十年、ワシはまだ結婚できんぞ。嘘をつくな、嘘を。 |
・これも、子どもの頃と大人になってからで、評価の違ってくる作品。初読の際は、地味で、世知辛くて、現実逃避をさせてくれないつまらないと言うのが正直な感想だが、ある程度経ってから読み返すと、結婚、離婚と言う深刻な問題を児童文学の枠の中で見事に結晶させた力作だと分かる。それでも、読み終わってなんとなく虚しい気持ちになるのも確かだ。こんな話なら、わざわざズッコケシリーズで読まなくても、現実の人生相談を覗けばいくらでもあるじゃないか、と。 |
・冒頭、柄にもなくハチベエが世のため人のために人生相談をはじめるくだりは、いつものズッコケらしくて期待できる。特にハチベエがクラスメイトに騙されて、精一杯オシャレして待ち合わせ場所へ向かうところは、いじらしくて涙が出る。 |
・ハカセが教育ママに怒鳴られて青褪めたりして、読んでるほうもいい加減暗くなるが、そこへまた来るのが、モーちゃんの母親の再婚と言う、実に生活感の濃い話題である。もっとも、そこから、モーちゃんの父親探しの壮大な旅へつながるのだから、我慢して最後まで読むべきだろう。 |
・もっとも、遂に父親に再会を果たしたモーちゃんを待っていたのは、子供向けのフィクションとは思えないほど、シビアで、しかしリアルな結末であった。ただ、旅を通して、モーちゃんが少し逞しくなるのが救いである。いや、元々モーちゃんは芯の強い子なのだが、普段は引っ込み思案で臆病なキャラの印象が強いだけで、今作では、それが表面に出ただけかもしれない。モーちゃんは「児童会長」でも、理屈ではなく肌身で感じる民主主義を口にしているが、今回もラストで親と子の関係、夫婦と子の関係について本質的な発言をしていることから、実はハカセ以上に賢いのかもしれない。 |
・作者は、モーちゃんの名前が三吉という、長男にはつけない名前だということを気にしていて、今回、それをクリアにしたかったという。また、あとがきで、自身の離婚歴に言及しているのも興味深い。 |
管理人の評価
・普通の小説として読めば、リアルな家庭小説として面白いが、児童文学、それもズッコケシリーズの一篇としてはあまりに深刻で退屈だ。 | ランクC |