第16作 | 謎のズッコケ海賊島 |
基礎データ
初版 | 1987年12月 |
ページ数 | 220(あとがき2含む) |
ジャンル | 宝探しアドベンチャー |
挿絵 | 前川かずお |
あらすじ | モーちゃんは港でひとりで釣りを楽しんでいたところ、見知らぬ中年男性に食事とお金を恵んでやることになる。その後、その男性からモーちゃんに電話がかかってきて、指定され場所へ向かうが、男性は怪我をしておりモーちゃんにお守りを託し、姿を消してしまう。お守りの中に財宝の隠し場所のようなメモを見付けた三人は、はりきって宝探しを始めるのだったが……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | 嵐の来訪者 | 10 |
2 | 海賊島へ | 68 |
3 | 謎の男たち | 116 |
4 | 脱出、そして…… | 161 |
作者からきみたちへのメッセージ
宝ものを探すときには、おおぜいで探しにでかけてはいけません。 せいぜい三人くらいが良いでしょう。たとえ宝ものがみつかっても、騒がないこと。こっそり掘りだします。 宝ものは、独り占めしないで、この本の作者にもわけてあげましょう。 |
作品鑑賞
・あとがきで作者が述べているように、作者にとって「宝探し」と言うのは児童文学の原点にして永遠のテーマなのである。今回は、「財宝調査隊」に続き、その宝探しをメインに、暗躍する悪漢たちから逃亡するスリリングな展開も用意された、純度の高いアドベンチャーに仕上がっている。 |
・これも作者の好きなものの一つ、釣りが発端になっているのは他の作品でもしばしば見られるものだ。 |
・物語の大半は、宝のありかを示すヒントの解読と、宝のある島、洞窟の探査に充てられている。その分、登場人物も限られており、ドラマの面白さと言う点ではいささか物足りない気味もあるが、これだけがっちり宝探し物語を描いてくれれば、不満はない。実際、これが決定版となってか、以降、同様のジャンルの作品は書かれていない。 |
・終盤、ハチベエたちが悪漢に捕まり、命の危険さえ覚える辺りの怖さ、機知と勇気で彼らから逃亡を図るシーンの緊迫感は、全シリーズを通しても、最高の出来である。 彼らが間一髪助かった場面では、読者の子供たちも我がことのように胸を撫で下ろしたことだろう。さらに、逃亡後に、本当の宝島へ三人組を連れて行く構成も、心憎い。洞窟の中でも、懐中電灯が切れてあわや遭難してしまうスリルが味わえる。 |
・「財宝調査隊」では、苦労したけれど、三人組は何も得るものがなかった。今回は、それを補う意味も込めてか、しっかりと国宝級の宝物が発見される結末になっているのも嬉しい。ただ、逆に価値がありすぎて、いつになったら三人組の懐に入るのか分からないとしているのも児童文学らしい仕上げだ。宝探しに人生を賭けて果てた男の悲哀が、最後の味付けになっている。 |
・花山町を離れた島が舞台になることが多いせいか、クラスメイトたちの影は薄い。 |
管理人の評価
・宝探し物、アドベンチャー物としては、ややスケールは小さいけれど、最高傑作と読んでいいくらいの内容。 | ランクB |