ズッコケ三人組全巻紹介017
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第17作 ズッコケ文化祭事件

基礎データ

初版 1988年8月
ページ数 220(あとがき2含む)
ジャンル 学校行事
挿絵 前川かずお
あらすじ 卒業式前の文化祭で、6年1組は舞台劇をすることに決定。ハチベエの知り合いの新谷敬三と言う有名な童話作家にその台本を書いて貰うが、出来上がったものの評判は悪く、生徒たちは勝手にその内容を変えてしまう。それでもハチベエたち三人組も、舞台の成功のために稽古や準備にいそしむのだったが……。

章立て(後ろの数字はページ)

1 文化祭の相談 10
2 童話作家、新谷敬三 60
3 『アタック3・極道編』 105
4 教師V.S.作家 160

作者からきみたちへのメッセージ

この作品は、すべてフィクションであり、したがって、作中に登場する童話作家や、小学校の先生に、特定のモデルは存在しないことを、
あらかじめおことわりしておきます。

作品鑑賞

・ジャンルは学校行事としたが、実質的には全シリーズ中唯一、舞台劇とすべきかもしれない。作中にかなりページを割いて劇中劇がふたつ載っているし、中盤以降はほとんど、舞台の練習、準備、そして上演の様子に費やされているからだ。それが、小学6年生がやるにしてはやや高度すぎるけれど、その描写は極めてリアルで、ついついのめりこんでしのう面白さがある。
・作者が自身の一部をモデルにして創作したような童話作家・新谷敬三も、その性格や境遇など、とても説得力のある描かれた方で、実在感が高い。
 とりわけ、新人賞を取った自分より、次点だった別の作家の方が今では売れっ子になっているなど、新進作家にとっては身につまされるような描写が光る。
・クラス全員での劇をモチーフにしているだけあり、かつてないほど、6年1組のクラスメイトが実際に活躍するキャラクターとして登場するのも特色だ。特に、大阪からの転校生で、芝居心のある徳大寺邦光は初登場のキャラだが、主役級の活躍を見せる。この辺りで、6年1組の全メンバーがほぼ揃ったと言えるのではないか。作家志望や、大柄だとか、双子だとか、名前以外の特徴もかなりはっきりした。同じクラスに双子は編入されないとは思うが。
・タイトルの「事件」は、最後にシナリオを改竄された新谷の激怒と、担任の宅和先生との討論のことを差すのであろうが、若干、内容とピッタリあってない気もする。宅和先生との論争は、かなり難解で、小学生では理解にあまる内容かもしれないが、それは成長してから分かるようになるので問題ない。
・新谷が、小事件を通して作家として一皮剥けた希望の持てるラストなのも心地よい。

管理人の評価

・スケールとしては小さく、波瀾もないのだが、学校の舞台劇としてはかなり読ませる。ただし、心に何か残るとまでは行かない。 ランクB