第26作 | ズッコケ三人組対怪盗X |
基礎データ
初版 | 1992年12月 |
ページ数 | 204(あとがき2含む) |
ジャンル | ミステリー |
挿絵 | 高橋信也 |
あらすじ | 巷を騒がす怪盗X。鮮やかな手口で様々な犯行を重ねる謎の盗賊であった。その手はやがて花山町の九条邸に 秘蔵されている茶器に伸びる。その家の娘と同じ小学校に通うズッコケ三人組は、怪盗Xの犯行に興味を持っていた ハカセを筆頭に、九条氏に捜査協力を申し出る。ズッコケ三人組と怪盗Xの長い戦いの火蓋が切って落とされた……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | 怪盗あらわる | 10 |
2 | Xの逆襲 | 66 |
3 | メーデー祭り大混乱 | 118 |
4 | ミドリ空港の大捕り物 | 162 |
作者からきみたちへのメッセージ
この物語は、いったいだれが書いたと思うかね。 作家の那須正幹だって……? ふ、ふ、ふ、……。 那須正幹という、たれ目のおじさんは、この世には実在しないのだよ。 この物語の真の作者は、このわたしなのだ。 X |
作品鑑賞
・全50作のターニングポイントとなる作品。作者が久しぶりに得意分野の純粋ミステリーに挑戦しているが、それ以上に、挿絵画家の交代が印象的だった。前川かずおが病気のため降板し、かわって高橋信也と言うアニメ作家が起用されたのだ。 と言っても、あのユニークなキャラクターは前川かずおの原画を引き続き採用し、極力従来のイメージを変えない方針が採られている。あとがきでも、作者はいずれ前川氏が復帰するものと願っていたようだが、周知のとおり、このまま前川氏は亡くなられ、以降最後まで高橋信也が挿絵を描くこととなる。 当然、高橋氏にとっては最初の仕事なだけに、前川氏の筆致の模倣と自身本来の絵柄が混在していたり、全体的に慣れていない印象だ。 個人的には、高橋氏の起用はNG。どういうしがらみがあるのか知る由もないが、無理にひとりの代役に最後まで担当させる必要はなかったように思う。定期的に違う挿絵画家に描かせたら、バラエティに富んで面白くなっていた気がする。 とにかく、この分岐点を境に、ズッコケシリーズの質的レベルが大きく下がってしまったのは紛れもない事実。 |
・今回、ミステリーと言いつつも、作者が確信犯的に乱歩の「怪人二十面相」シリーズを意識してパロディにしているのは面白い。非現実的な方法で犯罪を行い、変装までする怪盗Xに、犯罪事件に直接首を突っ込んで役者めいた台詞を吐く三人組など、普段とはだいぶテイストの異なる「ズッコケ」を堪能できる。 |
・最後に怪盗Xを逮捕した……と思いきや、見事などんでん返しを決めるのも憎い。さらにこれによって、シリーズ初にして唯一の続編が書かれることとなる。 |
管理人の評価
・作者が最初からジュヴナイル探偵小説の再現を狙っているので、ここは素直にその誘いに乗って大時代の探偵活劇を楽しむのが吉。 | ランクB |