ズッコケ三人組全巻紹介030
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第30作 ズッコケ三人組と学校の怪談

基礎データ

初版 1994年12月
ページ数 212(あとがき2含む)
ジャンル ホラー
挿絵 高橋信也
あらすじ 子供たちの間で「学校の七不思議」が大流行りだが、ハチベエたちの第二小学校には何故かそう言う言い伝えがない。ハチベエは自分たちで「七不思議」を作って噂を広めようとクラスメイトたちに呼びかけ、無事一つ多い「八不思議」が誕生する。しかし、やがて彼らの考えた「不思議」が現実に学校の中で起こり始める……。

章立て(後ろの数字はページ)

1 花山第二小学校 創立百二十周年 10
2 給食おばけ出現 59
3 二十年前の七不思議 110
4 せまりくるあかんぼうたち 157

作者からきみたちへのメッセージ

この作品を書いているさいちゅう、どうも気分がすぐれなかった。夜、ねむったと思ったら、恐ろしい夢をみたり、
びっくりして、とびおきようとしても、からだが金縛りになってうごけない。
机についていると、背後から、だれかに原稿をのぞきこまれているような気がする。
あれは、いったいなんだったのだろう。

作品鑑賞

・「忍者軍団」同様、シリーズ後期の作品としては奇跡的に成功している傑作。当時の流行だった「学校の怪談」をとりいれているが、怪談好きの那須正幹は通り一遍の「七不思議」に飽き足らず、学校の歴史にまで踏み込んだ、ミステリーとしての骨格も備え、観念的なSFの要素もある魅力的なプロットを編み出している。
・ラストのオチにつながる第二小学校の「校史」に関するエピソードから幕を開けている周到さといい、第一小学に対抗してハチベエたちが独自の「七(八)不思議」を創作しようとする展開といい、実に自然なストーリーの流れが心地よい。その過程で、それほど詳細に描かれることのなかった第二小学の校舎の様子などが明らかになるのも収穫である。
・中盤から、いよいよ本格的な怪談としてシフトチェンジするのだが、その際も、給食時間におかずが足りなかったりするという極めて身近でユーモラスなエピソードで口火を切っているのも効果的だ。子供が物置に入って消えてしまうと言う怪談も、SF的で面白い。さらに自分たちで考えた筈の「七不思議」の内容が、過去の第二小学校に既に存在していたと言う不可解な展開も、読者の興味をそらさない卓抜なアイデアで、怪談としての面白さと、謎解きミステリーとしての面白さを同時に味わえると言う豪華な構造に変化する。
・そして終盤のスペクタクル。彼らの学校を舞台にしたものに限らず、ここでの同時に多数のキャラクターが巻き込まれる急迫したシーンは、のちの「大震災」を除けば本作くらいでしか読めない物語の醍醐味である。妹のために普段と違って冷静さをなくすハカセの描写もいい。無数の赤ん坊が襲ってくると言うのも、想像しにくい状況だが、幻想的ではある。
・この作品で唯一残念なのは最後の怪異現象の消し方だろう。最初に伏線を張っていたとは言え、やや強引と言うか、いかにも机の上で考えたようなアイデアで、処理の仕方としてはやや物足りないのは否定できない。もっとも、かといって他に適当な締め括りの手段もなさそうではあるが……。
・学校を舞台にしているため、過去に登場したゲストも含めて、クラスメイトなどの生徒たちが多数登場するのも楽しい。
 ただ、ストーリー上、ドラマ部分はどうしても弱いのだが、そこまで要求するのは欲張りと言うものだろう。

管理人の評価

・いくつか書かれている怪談ものの中では、もっとも娯楽色の強い傑作かもしれない。怖いと言ってもワクワクするようなそういう感じのストーリーである。 ランクA