第39作 | ズッコケ海底大陸の秘密 |
基礎データ
初版 | 1999年7月 |
ページ数 | 212(あとがき2含む) |
ジャンル | SF |
挿絵 | 高橋信也 |
あらすじ | 三人組は四国のハチベエのおじさんのところへ遊びに来ていた。その漁港ではカッパの噂がささやかれていたが、 海底遺跡を調査中のダイバーが行方不明になる。三人はその娘とともに調査に乗り出した……。 |
章立て(後ろの数字はページ)
1 | カッパ伝説 | 10 |
2 | 海底人との遭遇 | 62 |
3 | 見守る人 | 108 |
4 | 謎の海底都市 | 159 |
作者からきみたちへのメッセージ
海は広い。 地球上の陸地を全部合わせたよりも広い。 海は深い。 世界の最高峰チョモランマのいただきより数倍深い。 もし北極や南極の氷がみんな溶けてしまったら、 地球の表面はぜんぶ海になってしまう。 そのときのために、きみも水泳の特訓をしておこうね。 |
作品鑑賞
・久しぶりのSFもの。三人組がハチベエのおじさんのところへ遊びにくる導入部は「あやうしズッコケ探検隊」を彷彿とさせて懐かしい。 後期作品の特徴として、滑り出しは結構期待できるのだが、物語が本格的に動き出すとかえってつまらなくなるというのが挙げられる。この作品も、三人組が女の子の父親の失踪事件を探るところくらいまではかなり楽しいのだが、海底人と言う物語の底が割れてからは、急に輝きが薄れる。 思うに、世界設定やそのディテールを描くのに手一杯で、肝心のドラマを組み立てることができなくなっているからではないだろうか。理由として、単純なことだが、文章量の配分の問題が考えられる。簡単に言うと、序盤の描写が長過ぎるため、中盤以降のスペースが足りなくなり、舞台の説明をするだけで終わってしまう。初期作品と比べれば如実だが、文章そのものが間延びして、適度な省略法が影を潜め、話の展開が遅くなっている。 もう一つの特徴として、その世界の人間が必要以上に冷たくなっている感じもする。この作品の、娘との最初のやりとり、大富豪とのやりとりなどがそれだ。それぞれに理由があってそう言う態度を見せているとは言え、同じ厳しい態度で接する「山賊修行中」の山賊たちとのやりとりにはそれほど不快感、刺々しさは覚えないのに、後期作品のそう言う部分にはなんともいえない拒絶感、異物排除の冷たさが伴っているように、自分には思われる。 |
・後半、三人組が海底世界から脱走を試みるなどのドラマティックなストーリー展開もなく、前述のようにSF的な世界状況を描くだけで終幕してしまうので、読んでも熱くなるところがない。 |
・ラストのちょっとした「不思議」がフックになっている程度だ。 |
管理人の評価
・鑑賞で述べたように、ドラマとしての面白さが薄い。後期作品に共通する欠点だ。それでも後期作品としては読めるほうだ。 | ランクD |